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「うっひょー!でっけぇー!!」
12月24日、午前9時過ぎ。睦月市某所にある総合レジャー施設、ドリームカントリー。
そこの敷地に足を踏み入れるなり、速水翔太は感嘆の声を上げた。それが、施設全体に向けられたものか、ドーム球場に限って向けられたのかは、はっきりしない。
「ほら、速水君行くよ」
「ほいほ~い」
眼鏡がトレードマークの大河原流導が、速水の名を呼び、球場に向かって歩き出す。
「近くで見ると、やっぱでけぇない」
「…………うん…」
集団の中で一番の巨漢の神崎大護も、球場を見上げるように眺め、少し面食らったように呟く。
隣を歩く、小柄で無口な山根隆文も、一言だけ同意の言葉を漏らす。
「どれぐらい参加すんだろうな?」
長身で容姿端麗な瑞原巧は、少しわくわくしながら隣を歩く男子に質問を投げかける。
「2、30チームもいれば多いと思うけどね」
冷静な口調で瑞原の質問に答える、桐崎健吾。少し細身だが、それ以外は普通の高校生。
そんな高校生ご一行である6人は、ジャージにセカバンという、いかにも高校球児らしい格好で今日のイベントへとやってきた。
イベント開始は10時30分。2日間に渡って開かれるイベントのうち、今日は予選の日となる。
「そういやチーム名どうする?」
「チーム名?」
瑞原の質問に全員が疑問符を頭に浮かべ、首を傾げた。
「別になんでもいい気はするけど」
「そうだな。弥商ファイターズとか、そんなんで…」
特に誰もこだわりを持ちそうにないので、瑞原が適当なネーミングに決めようとした。
しかし…
「はい!はい!」
勢いよく手を挙げる速水の姿。
全員は若干渋い表情を浮かべながらも、速水に視線を向ける。
「速水と愉快な仲間達がいい!」
「却下」
自分以外のメンバー全てに一斉に拒絶され、速水は大きくうなだれる。
しかし、これがいつも通りだと言わんばかりの様子で、6人は球場の受け付けへと向かっていく…。
どんっ!
「うわ…!」
「いてっ!」
球場の中に入ろうかという時に、近くの看板の陰から飛び出してきた少年と、健吾がぶつかった。
小学生ほどの少年は大きく尻餅をつき、健吾は慌てて傍に駆け寄った。
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