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「ごめんね、大丈夫?」
「……へいき」
健吾から差し出された手を掴むことなく、少年は立ち上がり、また勢い良く走り去っていった。
「無愛想なガキだな」
謝罪の言葉もない少年に、瑞原は肩をすくませ、また球場へと歩みを寄せる。健吾以外のメンバーもそれに続き、順番に中へと入っていった。
健吾は、遠く離れていく少年の背中に目をやっている。
ここの開園って、たしか10時のはずなんだけど…どうして…。
そんな疑問を頭に浮かべ、立ち尽くしていると、瑞原の声が聞こえてきた。
「健吾!何してんだ?」
「…なんでもない。今行くよ」
別に自分の知ったことではない。そう考えて、健吾は他のメンバーと同様、球場の中へと入っていった。
“レッディース、アーンドジェントルメン!…本日は、ここドリームランド、ドリーム球場に足をお運びいただき、誠にありがとうございます!…さて、当球場ではクリスマス特別イベントと致しまして、本日12月24日と25日の2日間、高校球児による熱いバトルを予定しております!……”
午前10時30分、球場内にイベントの開催を告げるアナウンスが流れ始めた。
健吾達6人は、他の参加者達と共に、選手控え室でこのアナウンスを耳にしていた。
「これって、いろんな人に見られるイベントなんだね…」
「球場でやる以上、客席は使えるしな」
「参加チーム数40ぐらいだっけ?」
「結構いたな」
「高校生以下なら、小、中学生でも参加できるみたいだね」
「ハンデをつけて調整するって言ってたな」
健吾が淡々と質問を投げかけ、瑞原がそれを捌いていく。
ユニフォームにも着替え終え、そろそろ入場かといったタイミング。
「緊張してきた。今日って、予選なんだよね?」
「あぁ。でかいアスレチックみたいなやつだってよ」
球場の広さでやるアスレチックって、どんな?
健吾がそう疑問に思っていると、イベントスタッフが入場するように、と連絡しに来た。
「よっし、行くぜ!」
「おう!」
瑞原の掛け声に全員が応え、6人は控え室を後にした。
“…それでは、選手達の準備が完了したようです!早速入場していただきましょう!…今日と明日を盛り上げてくれる選手達でっす!!”
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