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考える暇はくれないか。
不意打ちを諦めたベリト。その圧倒的な手数にものを言わせようと、吊っている器具を次々に振り下ろす。
視界に納めていれば躱すには困らない個々の一振りだが、それが幾つも同時に来られると話が違ってくる。ナイフを躱した先は振り子の軌道で、迫った刃を紙一重で避ける。そこへも刃物は降って来たが、真っ二つにされるよりはマシだ、と覚悟を決めて受ける。
鋼にも劣らないとも思えた表皮だが、研ぎ澄まされた悪魔の刃の前には脆くも切り裂かれた。それでも気にしている暇は無く、振り子に弾かれたナイフが軌道を変えて飛んでくるものにも注意をしなければならない。
もはや避け切れる量や軌道ではなく、致命傷を避けようとするが積もり重なればどんな軽傷も命を刈り取り兼ねない。
「ぐ……」
「ほう、まだ人間の形はしているか」
もう、立っているのが不思議だ……。
どこをどう、どれだけやられたのかは知らないが、床に溜まりを作り出した血。
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