辿る軌跡

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   欠けた仮面の先でベリトは笑みを堪えていた。拘束済みの女に、満身創痍の俺。いかにして屠(ほふ)るか考えているのだろう。本当に質が悪い。 「ヴァンガードも落ちたものよ。恐れるに足らんわ」 「意味が分からん。何の事だよ」  さっきから、ヴァンガードがどうした。  うちに悪魔と関わった人間は居ない筈だ。ヴァンガードの家系だから親父の方だろうが、言うのは辛いけど平民に近い無名貴族だ。そんな大それた魔法なんか使えない。 「問う必要は無いだろう、アレスの子孫よ。奇しくも初代の力を宿した末裔だが、もはや見る影も無い」  アレス……。  始まりのバーミリオン、ルミアが言っていた名前だ。彼女はアレスを待っている。俺がその子孫と言ったか。悪魔に、12賢者に、ヴァンガード。一体、何の繋がりがあるんだ。 「考えても分からぬよ。そして、誰も知り得ぬ。歴史に刻まれず、存在すら葬られた一族よ」  引導を渡す為にベリトの手には刃が握られた。
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