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序 章(1) 変わってる苗字よね
朝日がカーテンの隙間から溢れて、寝ている瞼に届いた。
朝を向かえた事にようやく気づいた啓太朗は、布団の中に潜り込み、枕を抱いたまま動かない。
―――― まだ、起きそうにもない。
頭上のクマのぬいぐるみが抱いている目覚まし時計も、鳴らずに彼が起きるのを待っているだけのようだ。
寝る前に食べかけたポテトチップスが、ガラステーブルの上にそのまま残されてはいるが、それ以外はきっちりしている。
家具類は、こだわった物が多く量産品は少ない。
机は、シンプルで色は淡い。
ビジネスホテルにあるような小型冷蔵庫も、製氷機能付きで両開き式というこだわりぶりだ。
一ヶ月前に予約していながら買えずにいたベージュのソファも、父に買ってもらい昨日この部屋に届いた。
気に入った物は手に入れるまで諦めない彼の個性の賜物で、どの家具も形、色や配置のバランスに調和が考えられている。
ただ一つ、天井に貼られた大きな悪魔のポスターを除いては……。
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