序 章(1) 変わってる苗字よね

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「おい、啓太朗。いつまで寝てるんだ、遅刻するぞ」  父親が階段の下で呼びつけた。  啓太朗は、夢の遠くでそれをなんとなく聞いた。  だが、それだけで足りたようで父の声が遠い意識までやってきて、啓太朗を揺すったらしい。 布団の中でゆっくり瞼が開かれた。  少し間があって、勢いよく布団からガバッとして、クマから目覚まし時計を奪い取ると……。  朝の5時だった。  ホッとしてよく見ると針が止まっている。 「あれ、電池切れた?」  あわてて部屋の時計を見ると、平然と8時20分を指している。 「マジかよ?」  ベッドから跳ね飛びガラステーブルを越え、足の先がポテトチップスをかすめた。  クローゼットを開け、昨日の夜に丁寧にアイロンをかけた高校の制服を素早く着て、階段を駆け下りる。 「寝起きは遅いが、朝支度は早いな」  階段の下で啓太朗が駆け下りて来るのを待つように、新聞と湯飲みを片手にしながら父はのんびりしている。
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