85人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、啓太朗。いつまで寝てるんだ、遅刻するぞ」
父親が階段の下で呼びつけた。
啓太朗は、夢の遠くでそれをなんとなく聞いた。
だが、それだけで足りたようで父の声が遠い意識までやってきて、啓太朗を揺すったらしい。
布団の中でゆっくり瞼が開かれた。
少し間があって、勢いよく布団からガバッとして、クマから目覚まし時計を奪い取ると……。
朝の5時だった。
ホッとしてよく見ると針が止まっている。
「あれ、電池切れた?」
あわてて部屋の時計を見ると、平然と8時20分を指している。
「マジかよ?」
ベッドから跳ね飛びガラステーブルを越え、足の先がポテトチップスをかすめた。
クローゼットを開け、昨日の夜に丁寧にアイロンをかけた高校の制服を素早く着て、階段を駆け下りる。
「寝起きは遅いが、朝支度は早いな」
階段の下で啓太朗が駆け下りて来るのを待つように、新聞と湯飲みを片手にしながら父はのんびりしている。
最初のコメントを投稿しよう!