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裏玄関を開けて風を通すと、道を挟んで鶴居家が見える。
「だろうね、あいつ時間にウルサイからなぁ」
啓太朗は、新品の靴を持って、裏玄関へ駆け出す。
「お前は?」
向き直って、家の中に入ろうとした父の前には、啓太朗が立っていた。
「何を言わせたいんだ?」
「………。支度は終わりか?」
「どいて、じゃまだ。ほらっ」
啓太朗は「靴の整理サンキュー!やるじゃん」と、せくせく靴を履く。
「さぁ、考古学に聞いてくれ」
これは、照れた時の父の決まり文句で、照れた時だけわかりやすい。
「考古学ばっかりじゃ考え方も偏るよ。たまには、母さんのお墓参りもしなくちゃね」
「そうだな、今日は命日だ。お前が学校行った後、お客が来るから、その後に行ってくるよ。それより、昨日の夜の事は、忘れちゃいないだろうな」
「忘れられないよ、じゃあ、行って来るね」
啓太朗は、そう言って家を騒々しく出ていった。
「お前には、感動の入学式というのはないのか?」
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