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「………葵さん?」
すぐ其処に人がいる気配と、遠慮がちなようで威圧的な声
この声
聞き覚えがある…、と思った
知っているような知らないような
御店に来てらした方……?
「あれ…?覚えてないんだ、俺だよ、俺麗だって」
その名前を聞いた刹那、脳に針が刺さったような衝撃が走って、全身から緊張と興奮が汗と混ざって滲み出す
「………お久し、ぶりで……」
「本当にそうだね、でも葵さんどうしたの?流鬼と喧嘩でもしちゃった?」
違います、違うんです
勝手に俺がウザい事押しつけてて呆れられて捨てられました
なんて、この頑な咽喉が言えたらどれだけ楽たろう
口は一文字に閉じて、必死に首を振った
然し、口よりも愚直なのは
下を向いた俺の目玉
何かがぷつん、と切れたみたいに雫が溢れ出す
これを堰止める術なんて俺は知らない
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