うそつきは泥棒だ

2/22
1290人が本棚に入れています
本棚に追加
/408ページ
 部屋になんとかミツルを運んだジェイは、ソファに乱暴に置いて、やっとミツルの怪我を知った。 「……お前、」  浅い傷のようで、血はもう止まっていた。しかし、胸からななめに腹まで刻まれた傷は、痛々しい。  ジェイはすぐに机の上に放置されていた鞄から薬草を取り出すと、水に浸し、ミツルの傷にペタペタと貼った。 「………っつう、」  染みるのか、苦痛に顔を歪ませるミツル。 「我慢しろ、男だろ」 「女だもんー」  弱ってるのか、それでもミツルはおちゃらけて笑みを浮かべる。額には玉の汗。  この傷が魔物にやられたものなら、もしかしたら毒が混じっているかもしれない。ご主人が一緒だったから、毒消しを施しているかもしれないけど……。 「あ、ご主人!」  ミツルのことですっかり忘れていたカイルのことを思い出し、ジェイはカイルの眠るベッドへ向かおうとした。が、呼び止められて、ミツルを振り向く。 「なんだよ、」  急いでんのに、と見ると、ミツルの手には白い花。 「なんだよ」  弱々しく掲げられたそれを受け取る。 「風邪に効く薬草だそうだ」  ミツルはそれだけ言うと、目をつむり眠りについた。 「……まさか」  ジェイは苦しそうにかたく目をつむるミツルを見つめた。
/408ページ

最初のコメントを投稿しよう!