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部屋になんとかミツルを運んだジェイは、ソファに乱暴に置いて、やっとミツルの怪我を知った。
「……お前、」
浅い傷のようで、血はもう止まっていた。しかし、胸からななめに腹まで刻まれた傷は、痛々しい。
ジェイはすぐに机の上に放置されていた鞄から薬草を取り出すと、水に浸し、ミツルの傷にペタペタと貼った。
「………っつう、」
染みるのか、苦痛に顔を歪ませるミツル。
「我慢しろ、男だろ」
「女だもんー」
弱ってるのか、それでもミツルはおちゃらけて笑みを浮かべる。額には玉の汗。
この傷が魔物にやられたものなら、もしかしたら毒が混じっているかもしれない。ご主人が一緒だったから、毒消しを施しているかもしれないけど……。
「あ、ご主人!」
ミツルのことですっかり忘れていたカイルのことを思い出し、ジェイはカイルの眠るベッドへ向かおうとした。が、呼び止められて、ミツルを振り向く。
「なんだよ、」
急いでんのに、と見ると、ミツルの手には白い花。
「なんだよ」
弱々しく掲げられたそれを受け取る。
「風邪に効く薬草だそうだ」
ミツルはそれだけ言うと、目をつむり眠りについた。
「……まさか」
ジェイは苦しそうにかたく目をつむるミツルを見つめた。
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