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「ご主人、」
カイルはジェイを見た。黒い髪に赤い瞳。いつ見ても諫められているようだ、とつい苦笑してしまう。
「なんです?」
ジェイは重い荷物をよいせっと背負いなおした。
「あの薬草……風邪を治したやつ、」
ああ、とカイルは頷いた。
「本当によく効く薬草です。ありがとう、ジェイ」
「いや、違うんだ」
赤い瞳がまっすぐに僕を見た。
「……やっぱり、なんでもない」
ジェイはふいと視線をそらした。
「そうですか?」
聞き返す雰囲気ではなかったので、そのままにした。
「うん、オレ、泥棒だから」
ジェイのつぶやきに重なるように、ミツルの元気な声が僕の肩を叩いた。
「やっと追いついた!」
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