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「散歩ですよ散歩。ずっと部屋の中に居ても退屈でしてね…
何かご不満でも有りますか?」
内心は凄く焦っていて、今にも泣き出しそうだった。
……でも気持ちを落ち着かせ、何とか冷静を保った。
そんな私の内心を読みとったのか読みとれなかったのか知らないが、クスッと笑うと、
「散歩しやはんのに少し足を踏み外さはったようやね…。その手に持ってはる物は何どすか?」
と、私の手に視線を向けた。
『まずい!』
血の気が引いていくのを感じた。
背中に冷や汗が伝っていくのが分かる。
「見てしまわはった以上は生きて帰す訳にはいまへんな…。あの世に行って貰いまひょうか。」
するとあのこの世とは思えない笑みを浮かべ、懐に隠し持っていた刃物を抜き出し、まるで忍者のような素早さで目の前まで近付き……
「ほな、さいなら。」
という、冷たい残酷な声が耳元で聴こえた。
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