聖なる夜に口付けを

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 街に出ればカラフルなイルミネーションが街路樹を彩り、ウインドもクリスマス一色に染まっている。  今日はクリスマス当日。暖房の効いた自宅のリビングでソファーに腰掛けテレビを点ける。クリスマスの特番らしくいつも以上に高いテンションの芸能人を見て眉を顰めた。  ダイニングテーブルの上には鳥の足やポテトサラダ、パスタなどが二人分、手付かずのまま淋しそうに座っている。ケーキは冷蔵庫の中で自分の出番を待ち構えているだろう。  本来ならば恋人である春賀俊弥と一緒にクリスマスを過ごす予定だったのだが、急な仕事が入ったらしく昼過ぎに飛び出して行った。  「仕事が終わったら連絡する」と言って家を出ていったのを最後にマナーモードを解除した携帯電話から着メロは流れてこない。  いつになったら仕事が終わるんだ、と口をへの字に曲げた。 「……料理、先に食っちまうぞ」  面白くないテレビを消し、ソファーに顔を埋める。  俊弥の為に頑張って作った料理を横目で睨み付け、雅人は溜息を吐き出した。自分も俊弥と同じ所に勤務している分、俊弥の多忙さはよく知っている。仕事上、仕方のない事ではあるが、それでもクリスマスくらいは二人でゆっくりしたかった。
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