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「俊弥、お帰り」
「ただいま……ごめんな、遅くなって」
ドラマの中で刑事が着ていたものと同じようなコートを脱ぎながらリビングへと向かう俊弥を、後ろから追い掛ける。
「飯、食べてなかったのか」
「うん。先に風呂入ってくる?外、寒かっただろ」
「いや……後で雅人で暖まるからいい」
コートをリビングのソファーに掛け、上着を脱ぐとネクタイを緩めた。いつもと同じ動作をしているだけなのに、その俊弥の姿が色っぽく見えて雅人は自分の頬が熱くなるのを感じた。
それが、俊弥の言った言葉に対してなのか、俊弥の動作に対してなのか今の雅人には分からなかった。
「っ、ば、バカっ!何言って……」
言い終わる前に腕を引かれ、いとも簡単に俊弥の腕の中に閉じ込められる。そっ、と背中に手を回し肩に額を預けた。
「雅人」
名前を呼ばれ、顔を持ち上げると目の前に俊弥の端整な顔があり、思わず顔を背ける。
しかし、俊弥の手によって無理矢理顔を向けさせられた。
「雅人……愛してる」
「んんっ!」
降ってきた貪るようなキスに、自然と眉間に皺が寄る。厚ぼったい舌が唇を割って入り、咥内を縦横無尽に動き回り犯していく。
「はっ、ん、ふ……」
「ん、まさ……雅人」
くちゅ、くちゅ、と淫らな音が室内に響き、その音にさえも反応し足がガクガクと震える。床に座り込まないように、俊弥のシャツをきつく握り締めた。
「ん、ぁ……」
軽く唇を吸われ、離れていく俊弥を名残惜しく見つめると意地悪な笑みが返ってきた。
「どうした?」
「……や、……その」
続きをして欲しいと身体が言っているがどうしても言葉にできない。顔を朱に染めたまま視線を彷徨わせる。ちらちらと察してくれと言わんばかりに俊弥を見上げるが、無言の笑顔が言葉を紡がせようとしている。
「……な、何なんだよ急に!発情期かよ!」
ようやく出てきた言葉は突拍子の無いもので、一瞬だけ俊弥は目を丸くした。
しかし、すぐに意地の悪い笑みになり耳元に口を寄せて囁かれた。
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