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俺の部屋は廊下の突き当たりに位置している。
そのため、目の前に広がる光景はただひたすらに長い廊下、壁には無数のドアがある。
距離にして5、60mほどか。
向こう側には下に降りる階段と、上に上がる階段が見える。
この屋敷は4階建てになっていて、俺の部屋は2階に位置する。
ちなみに3階は使用人達の自室、4階はほとんど空き部屋となっている。
慣れたとはいえ、さすがにこの距離はなぁ……。
毎朝憂鬱になる。
だが、こんなことで鬱になっている時ではない。
「……ふぅ」
俺は息を吐き出すと、真っ直ぐ歩き始めた。
使用人達が毎日毎日掃除をしてくれているので、廊下には埃ひとつない。
キュッ キュッと小気味良い音をたてながら床を蹴り、足を進める。
そして、階段を降りて1階のリビングへ向かった。
ガチャ
リビングのドアを開くと、コーヒーのいい香りと食欲をそそるトーストの匂いが俺の心を落ち着かせる。
しばらくその香りを堪能していると、リビングの奥にあるテーブルに座っていた女性が立ち上がり、俺の方へ顔を向けた。
そんな彼女に俺は声をかける。
「おはよう母さん」
「あら、蒼ちゃんおはよう。
今日から高校生ね。
高校の制服も似合ってるわよ」
そう言いながらその女性……俺の実の母、結城 茜(ユウキ アカネ)は俺の肩を白くて細い手で小突く。
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