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辛い
好物がシシトウだったとしよう
私の事だからそれを一番最後に食べるだろう
食事も終盤に差し掛かり
幸福な気持ちで残りの一本のシシトウに箸を伸ばす
だがもしもそこで辛いシシトウに当たってしまったらどうする?
私の気分は果てしなく萎み
夜も眠れないままになるだろう
そんな時のためにシシトウを二本残しておく必要がある
食事も終盤に差し掛かり
えもいわれぬ気持ちで残りの二本のシシトウに箸を伸ばす
だがもしもそこで辛いシシトウに当たってしまったらどうする?
案ずることはない
二本あるのだから
ゆっくりと視界はスローモーションになり
一本目のシシトウを口に運ぶ
しまった、辛い
が、大丈夫だ
まだ私にはもう一本残っている
この一本の為の座興だと思えば先程の辛さも楽しめるというもの
どこからかオーケストラの演奏が聞こえてくるようだ
私は次への期待に胸を膨らませ
最後の最後のシシトウを頬張った
?
!?
!!
辛い!?
何ということだ!!
二本とも辛いだなんて!
私は全てのものに失望し首を括りかねない勢いで椅子から崩れ落ちた
ここで最初に戻り視点を変えてみよう
私は辛いシシトウが大好物なのだと!
するとどうだろう
私の心は弾力性に優れ少しも萎む事なく
良質の睡眠を手に入れられるのだ
二本とも辛いとくれば
なんと運のいい人間であろうか!
辺りは眩く輝きだし
私は全てのものに希望を見出すだろう!!
と一頻り考えたところで、私の好物はシシトウではない事を思い出し
一番最初にシシトウを頬張ったのだった
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