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スイッチ
酷く温かいものに溺れたくなったので
うねる渦と共に回ってみたのです
ごうんごうんと回る洗濯機の中は
決してメリーゴーランドではなかったのだけど
あのオルゴールくらいにならなれる気がしたのです
遅すぎたと言い
早すぎたとも言い
もうやめたと投げ出すわりに
手の届く範囲に留めていたりして
もっとうんと遠くへ投げればいいのにと
誰でもない誰かが
自分ではない自分に呟いていました
回っていたら
生暖かい風が頬に触れて
それがとても君に似ていたので
ごうごうと加速してみたのです
干しっぱなしのタオルが飛んでってしまって
少年のアイスクリームが一つ落ちてしまって
シルクハットの中からはやっぱり何にも出なくって
僕は
何度も握り直した手を
何度も眺めて
何度も洗ってみたけれど
これはもう
洗っても洗っても落ちないのだと
気付いたのです
だから
絵を描こうと思いました
出来るだけ原色で
絵を描こうと思いました
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