スイッチⅡ

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スイッチⅡ

酷く温かいものに溺れたくなったので コトコトと囁くスープの中に浸ってみたのです 全てが蒸発してゆくようでした いつまでもそうしている内にすっかり煮詰まってしまって 限界を越えたじゃがいもはくたりと煮崩れてしまって 網戸越しの古いデジタル画面の世界では とてもポップな音がしていたので僕は飛び出しました ぐらぐらでぐるぐるな視界は ジェットコースターのようで 父のゆりかごのようで 焦点が合わなくて 思わず目を瞑りました 皆一様にさよならばかりを置いてゆきます 最後にジジジ、という悲しい音を残して 君の声も途切れてしまいました 黒い服を着た人の列と 白い服を着た人の列と 僕はどちらにも並びませんでした こうしてまた 呆気なく先頭を見失ってゆくのです 流れに乗ろうと思い立ち 夏にためたアイスの棒でイカダを作り始めました 僕は日々進化します けれど同じ位の速度で 日々劣化してゆきます 僕もいつかは此処にさよならを 置いて行かねばなりません  
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