47人が本棚に入れています
本棚に追加
内在の子
いつからか私の中のコップはいつも腹八分目でご馳走様をする
手は口よりもお喋りになり私を困らせてばかり
四つ葉のクローバーを見つけられなかった少女は
三つ葉のクローバーをごっそり持ち帰り
小さな小さな幸福を少しずつ頬張る
思いは溢れかえっていたけれど
何一つ言葉にならなかった
あの時飲み込んだ西瓜の種がめきめきと成長しだしたようで
手垢のついた幼少期に死んでしまった少女は
私が大人になってからひょっこり顔を出したのだ
(白いワンピースの似合う女の子になりたかった)
(ソフトクリームを上手に食べれるようになったら一緒に連れて行ってあげるよ、と言った犬はいつまでたっても来なかったじゃない)
踏み固められなかった地盤は黒糖のよう
すぐに蟻が食い潰して
表と裏の距離が離れる度
憎しみは濃くなってしまったし30回噛んでもなくならなかった
ぎゅうと120分に凝縮してみてもキュルキュルと巻き戻すことは叶わない
誰かの目に触れることも
(あの日あの時救わなければ)
消え去ったわけじゃなく隠れているだけなのだ
昼間のお月様みたいに
(少しの優しさと沢山の嘘が編み込まれたマフラーは
それでもやっぱり暖かいからぐるぐると巻いてしまうよ)
少女はいつまでも少女のままだけれど
私はまだ成長することを許されているのだから
少女が飲み込んだ
「あのね」や「なんで」を私がいつか口にする時
私達の縫い目がなくなる時
そしたら産声よりも大きな声でこの子が泣いて叫んで喚いてくれたらいい
そうして一枚捲れた世界でどうかもう一度
四つ葉のクローバーを探して欲しい
最初のコメントを投稿しよう!