冬場の話

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冬場の話

家に帰ったらとにかくすぐに家中の電気をつけるの 明るいっていうだけで暖かいような気がするもの 特に冬場はね わたしを待っているのはいつも一膳のご飯だけ 昨日は緑のふりかけだったから今日は黄色ね 時間の経ったお茶碗の中には何が詰まってるっていうの これだからラップの水滴は嫌いなのよ 冷蔵庫を開けると見たこともないメーカーのチョコレートがまた増えてる (今日は勝ったのかしら パチンコの景品ってなんだか宇宙みたい) 母はいつからわたしの前で煙草を吸うようになったんだっけ そうだ、ある時わたし言ったんだった もう知ってるんだから隠れて吸わなくてもいいよって (だからってそんなに堂々と当たり前のように吸わないでよ!) 罪悪感とかあったのかしら? 許したらそれで終わりなのね 冷めきったご飯は凶器よ ごくりと飲み込んだ時のあの冷たさ 特に冬場はね 炊きたてのと冷めたのって同じ釜で炊いたのに全くの別物なんじゃないかってこの時ばかりは疑ってしまうわ そうよ!冷えきってるのは茶碗の中だけじゃないわ! 同じ屋根の下にいるのよ、わたし達 (でもねたまに冷めた米粒が人に見える時があるの 密集しててゴロンとしてまとまりたがってて なんだか地球みたいで ほんの少しホッとする) ご馳走様したら明日の為にご飯を炊きましょうね 少し柔らかめに炊きましょうね (この湯気をあげたかった 父に母に、勿論兄にも) ねぇわたし達もっと愛し合えるかしら?愛し合えるのかしら? ねぇわたしは青いふりかけを探してもいいのかしら?  
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