無題

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無題

蟻は目次の横でぺしゃりと潰れ本の一部になりたがり するりと舞い込んだ落ち葉は壁に張り付き飾られたがった (私は、私は、) 野良猫は虎の背に焦がれ絨毯になりたがり 毛布はどうにもくるまれたがった (私は、私は、) 踊りながら 私は一つ一つに題名をつけて回った 時には悲観しながら (嗚呼嗚呼 きっと君はとても素敵なものを見たんだね) 手のひらをじっと見つめていると 頭と体とが離れてゆく 何処か遠い所 あるいはうんと近いのかもしれない 何にもなれなかった かと言って何にでもなれるわけでもなかった (私は私につける題名が無い) バラバラと雨が降り出す バラバラとジグソーパズルになる ピカピカに浴槽を磨き上げた後のような感覚 (そして気付く 私だけが汚れている事と石鹸を買い忘れた事に) バラバラと雨に混ざって私が消えたのか バラバラと私に混ざって雨が消えたのか それは最後までわからなかった  
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