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けれど、だめか。わたしは、汚れてる。何度も踏まれてはいないけれど、この足跡のように、一回が致命的。
ぜろといちの境界線は、懶惰のリズム。世界を壊す、サタンの慟哭。けれど……、あがいてふよふよしていたら、丘という名の公園がすぐ目の前にあって、ちょっと、びっくりした。
「入らないの?」ときみが訊くから、わたしは「入るよ」と笑った。
「じゃあ、何で足を止めるの?」ときみが訊くから、わたしは「わからない」と言った。足は、止まったまま。機械仕掛けの人形が、ネジ巻きを待っているような状態。助けて欲しい時、人は決まって動けない。
じゃあ、僕についてきな。
だから、二人じゃなきゃ駄目なの。振り向いたわたしの頬は、雪を瞬く間に透明にした。
きみは、わたしをツルツル滑りながらけん引していく。真っ直ぐに。振り付ける雪から、守るように。
何も訊かないよ、僕は。
そうも零した。わたしは、言える訳ないと思った。だって、言ってしまったなら、きみはきっと罪を犯す。そうしてやはり、春の雪へと変わるだろう。わたしの家に今でも居座る、あの唯一の異性と共に。
ブランコ、簡易的なアスレチックを抜けたら、高台の上に、金色に輝く鐘があって、それは余りに皮肉過ぎて、わたしは内心壊したくなった。
けれど、指は何時の間にか五本、しかも恋人繋ぎで、わたしは離したくない。ああ、なんて打算的、思わず熱くなる。
きみはそんなわたしを見て、変な顔、と言った。くしゃっとした。わたしは、きみもだよ、と言った。
登ってみる?
いや、いいよ。
何で?
……その道は、もう歩けないから、とは言えない。わたしは逆に、今歩いてきた道を振り返った。アーケードから、ふたりで夜を過ごした駅まで、すべからく見渡せた。ああ、何だか……、
「 」
雪が、吹雪いた。本当に素敵だと思った。声まで吸い込んでいってしまうから。
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