ハートの9

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「何の用、って……。これから帰るとこですけど?」 「おお、そうか……。んじゃ、気を付けて帰れよ?」 新井君がそう言うと、植木さんは満面の笑みを浮かべて返事をした。 「うんっ! じゃーねー♪」 植木さんが角を曲がるまで見送った後に、新井君は力なくその場に座り込んだ。 「あ~ビビった~……。心の準備が足らなくて渡せなかったな~」 そして、顔を少しだけ悲しげに歪ませて、呟く。 「今日渡せなきゃ、何の意味も無いのに……」 さて、今こそ私の出番ですかね。必ずや、その紙袋、渡させてあげましょう。
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