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「俺…前にも、嘘をつかれたことに腹が立って、鬼に舌を抜かせたことがあるんだ。」
「え…?」
「そのときに俺の前で抜かせたから、下界でそんな風に言われたんだと思うよ。教訓としてね…」
「でも、輪廻する際に冥界での記憶は消えるのでは?」
「普通はね…たまに残ってるのがいるんだ。
記憶は魂に刻まれるものだから、ふとしたことで思い出しちゃったりするの。」
「…なぜ、そのようなことをされたんですか?」
「滅多にそんなことはないんだけど、本当にムカついたからね…」
「…。」
「君も嘘、ついてるでしょ?」
「…!」
「隠さなくていいよ」
「そんなこと…」
「俺、鬼男君に嘘つかれるのが一番辛い…」
そんなこと言われても…
言える訳がない
大王のことが嫌いな訳ではない。
むしろ慕っているけど…
大王が口にする【好き】とは違う気がする…
だから、僕が口にする言葉が嘘になる。
「ごめんね、鬼男君」
「え…」
「俺、臆病者で…」
「どういう意味ですか?」
「君が本当のこと言えないの、
俺ちゃんと分かってるんだ
ただ…真実を聞くのが怖いだけなんだ…」
「大好きだよ」
「…っ」
「これでしょ?鬼男君…」
「……はい」
「鬼男君が困るなら、もう口にしないから…」
大王は全部分かって…
僕よりも大王の方が苦しんでるのに…
僕が早くにはっきりしていれば、
大王が苦しむこともなかったんだよな…
「大王」
「ん?」
「今はまだ…大王の気持ちに応えられるかどうかは分からないですけど…善処します///」
「!」
「だから…」
「ありがとう…今はそれで十分だよ」
これから先どうなるかは分からないけど、
僕は当分の間はこの人の隣にいるだろう…
最期の日が来る、その日まで。
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