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俺が初めて耀を見たのは入学したての頃で、屋上で空を見上げながら泣いていた。
風が耀の柔らかい髪を慰めるように撫で、それを耳にかける姿がとても扇情的だった。
「泣いてるの?」
思わず話しかけてみたら、びくりと肩が揺れゆっくりとこちらに振り返った。
「…別に」
ああ、勿体ない。
栗色の柔らかい髪、男とは思えない中性的な顔立ちと線の細い体。
これで笑顔を振りまければ相当モテるだろうに、多分こいつは愛想が無い。
「嘘。だって俺ずっと見てたし。」
「っは?いつからいたの」
ずっと、という言葉が引っ掛かったのか、怪訝そうな顔でこちらを見つめる。
「んーと、空を見ながら泣いて何か呟いてた辺りから。」
俺の言葉で、何か思いだしたのだろう。
グッと悔しそうに唇を噛みしめた。
「見てたなら声かけろ」
「いやーあまりに綺麗だったから見惚れちゃって」
最後の言葉を言い終えると同時に思いっきり足を踏まれた。
「俺、綺麗って言われるの大嫌い。ついでにあんたも大嫌い。」
ジロリと俺を厳しく睨んで不機嫌丸出しに屋上から飛び出していったその姿をただ茫然と見ていた。
「それが今じゃ一緒にランチだもんねー人生って不思議だ」
「俺は別にお前と一緒に食う予定なんてありませんけど」
パンを仏頂面で頬張る耀は、この天気の良さは嫌いじゃないのか俺から逃げずに屋上で飯を一緒に食ってくれる。
「あの頃から耀は耀だよね」
「なにが」
「そのツンツンしたところとか?」
「うざ。
俺別にツンツンしてない」
「ほらね、そういうとこ変わって無い」
初対面で言われたことを思い出し懐かしさに笑みが零れる。
いや、大嫌いとか言われてるけど。
気付けば食事を終え、教室に戻ろうと腰を上げていた耀。
「葉山?
葉山は俺を変わって無いって言ったけど、俺だって変わった」
その言葉に思わず首を傾げる。
冷たい態度はそのままだし、乱暴な言葉遣いもそのままだし。
「葉山のこと、大嫌いからウザイに変わった」
悪戯に笑みを浮かべてこちらを振り返らずに屋上まで速足で出ていってしまった。
「…え?」
それって、いいこと?
悪いこと?
それよりもさっきの笑い方。
普段は決して笑わないが、時々、本当に時々笑うんだ。
「…反則…」
赤い顔を両手で覆い、俺はひたすらに残りの飯を胃に押し入れた。
あの言葉の意味、ちゃんと耀に聞かないとなーなんて思いながら。
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