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「ん。」 「あ?」 数学の授業中、そういえば今日は朝からあのうるさい奴に出会ってないなーと思いながら外を眺めた。 窓際の一番後ろという特等席で、前に座っている野晴は俺よりでかいので壁にもなるし、まさに天国。 「野晴、なに?」 無言で携帯を差し出してくる…見ていいの? 受け取ってこっそり見てみるとそこには差し出し人「泉」の名前。 「は?葉山、風邪ひいたの?」 「そう。俺のとこにメール入ってた」 なるほど、だから今日は来てないのか。 ふーん、可哀想だねと心にもないことを言って携帯を閉じて野晴へ返す。 「耀、下まで読んでみ?」 「は?」 俺の手からひょいと携帯を奪えば、下へとスクロールしていく。 そこで文面が出てきたのか再び俺に渡された。 そこにあった文字は… 「…」 「泉が風邪引いてる間、耀が浮気しないように見とけって言われた」 「しね」 「愛されてるねー」 ニヒルな笑みを浮かべては、からかうように俺を笑う。 「浮気もなにも俺はあいつと友達ですらない」 「ふーん、俺は?」 「友達」 「じゃあ泉は?」 「他人」 俺の答えを聞いた野晴は一瞬その吊りあがった目を開けば、俺の頭をくしゃりと撫でて前に向き直った。 そう。 今日は葉山は休みだから、俺の好きな静かな時間を邪魔されることは無いんだ。 うん、これくらい静かな方がちょうどいい。 熱で苦しんでいるだろう葉山を想い浮かべながら、俺は一人でこのゆったりとした時間を楽しむことにした。
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