第一夜 降臨

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西暦2000年。 20世紀最後のこの年に、まるで示し合わせたかのごとく歴史的大発見が世界中で多発する。 まずはエジプト。 1月に突如カイロを襲った大地震により、地下に埋まっていた遺跡が地表に現れた。 かなり古い遺跡らしく、ピラミッドよりも前に作られていたのではないかという説があちらこちらで囁かれた。 しかも、この遺跡からは「ある技術」に関する内容が記述された石碑が多く見つかった。 外でもない「魔術」に関する石碑だ。 魔術による病気や怪我の治療、城の防衛、または魔術を利用した武器などもそこに記されていた。 それだけならば以前に何度も発見された魔術に関する記録と大差がない。 この遺跡が歴史的大発見とされた理由は、その「魔術」が「科学」の理論に基づいた技術だったからである。 「物理学」「化学」「生物学」といった様々な分野から検証した結果、この石碑に記されていた「魔術」は今までのオカルト(非科学的)なものではなく、現代科学と同じ理論によって成り立っている事が判明し、世界中の注目を集め始めた。 そんな「魔術」の解析が本格的に始められた2000年5月、海を挟んだ隣の国ギリシャの遺跡からも似た石碑が発見された。 それに続き、アステカの遺跡や中国、インドからも続々と「魔術」に関する記録が見つかる。 この大発見により、翌年2001年は新世紀の始まりと同時に、近代魔術の始まりの年とされた。 そして、それから8年。 2009年8月。 「魔術」は「科学」として認められた。
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