第一夜 降臨

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「……黒裂君。このままだと、第1志望校どころか第3志望校も危ういよ?」 これが、一昨日の三者面談で担任が言ったセリフだ。 まぁ早い話、今までサボってたから、このままだと「中浪」の危険性があるって事だ。 この時一緒にいた一番上の姉ちゃんにこっぴどく叱られ、さすがに今のままじゃまずいと思い、現在に至るという訳。 そんな俺が今いる場所は、近所にある「飛鳥書店」という名の小さな本屋だ。 ここの店の子供「飛鳥 聖徳(あすか きよのり)」は同じクラスのダチで、幼稚園の頃からの付き合いだ。 ここで、一つ疑問が出てくる事だろう。 「なんでさっき太子って呼んだの?」ってな感じの疑問がな。 答えは超簡単。 「太子」は「聖徳」のあだ名だ。 もう何人も気づいてるだろうが、その由来はかの有名な「聖徳太子」から来ている。 他にも「壱万円札」といったあだ名もあるが、どちらも名付け親は俺だ。 そんな太子のいる「飛鳥書店」に来たのはもちろん、来るべき受験に備えて問題集を購入する為である。 もっとも、一般の人達から見たら遅すぎるのだろうが…… 「いいのかよ。魔術関係の本なんか読んでて。高校受験の本買いに来たんだろ?」 「うっせーな。わかってんだよ。ちょっと見てただけだろ」 太子に背を向け、俺は狭い店内の通路をレジの方へ歩く。 高校受験関連の本は、レジのすぐ隣にまとめて置かれているのだ。 俺の後を太子が着いてくるのが足音でわかる。 俺はまず入学願書の前にやって来た。 「……お前…まさか、まだ願書も出してなかったのか!?」 信じられないといった口調で太子が言った。 (へいへい。そうでございますよ) 太子を無視しつつ、俺はまず第1志望の学校の願書を手に取った。 続けて第2志望の学校の願書を探していた俺の目にある物が映る。 (……青欒(せいらん)学園……入学願書?) それは願書が並べられた中のちょうど中央に置かれており、 群青色の封筒に金色の文字で書かれた学校名が一際目立っていた。 「なぁ、確か青欒って魔術学校だったよな?」 「ああ。日本に4校しかない魔術学校の内の1校だな」 俺の質問に太子は表情を変えずに答えた。
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