第一夜 降臨

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今現在、世界中で魔術なる物が利用、研究されている。 何でも、80年くらい前に発見された遺跡の魔術に関する記録を研究する内に、魔術によって世界中で起こっている様々な問題を解決出来るかも知れないと考え出したのが全ての始まりらしい。 中でも今世紀最大の発明と言われているのが、魔力を動力源とした魔導エンジンの開発だ。 従来のガソリンエンジンと違い、魔導エンジンは大気汚染を促進する排気ガスが出ないらしく、これによって環境問題のほとんどが解決された。 現在ではガソリンで走る車など稀で、市販されている自動車の9割以上が魔導エンジンを積んでいる。 そんな魔術に関する知識を教えるのが、魔術学校である。 「……刃…お前、青欒受けるなんて言い出さねぇよな?」 「言ったらどうだってんだよ………」 「やめとけやめとけ。あそこって試験を受けさせる前に魔術の才能があるか適性検査をするって噂だしな。だから、俺ら一般人なんか絶対入れねぇよ。  ……第一、刃の学力じゃ才能が有っても無理だろ」 太子は憐れみを込めた目で俺を見ている。 「余計なお世話だ!! はなっから青欒なんか受ける気ねぇしな!!」 俺は第2志望校と第3志望校の願書を手に取り、さらに公立高校の過去問がまとめられた問題集を1冊棚から抜き取った。 足早にレジに行くと、太子の親父に願書と問題集を手渡す。 ちなみに、現代の人間はお札なんて持ち歩かない。 と言うよりも、どこにも使う場所が無い。 数年前に新しい生体認証システムが開発され、専門機関に登録さえしておけば、設置されている装置を利用する事で自動的に口座から代金が引き落とされるようになっているのだ。 全国の商店や飲食店はこの装置の設置を法律で義務づけられている。 もちろん、こんな田舎の小さな本屋ですら例外ではない。 レジスターに取りつけられたセンサーに手を置き、願書と問題集の代金を払った俺は太子には目も向けずに店の外へ出ようとした。 「あっ!! ちょっと待てよ刃」 呼び止められても振り向かずに立ち止まる俺。 そんな俺の背中に、太子は微笑みかけながらこう言った。 「………頑張れよ……」 「………お前もな」 俺は振り向かずに、小さく手を振った。
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