第一夜 降臨

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後ろからやたらデカイ足音が聞こえてくるが振り向いてる場合じゃないな。 そんな事を考えていると、 グルルル 前方から唸り声が聞こえてきた。 足音はまだ背後から聞こえてくる。 (………どう考えても子犬の声じゃねぇな) 必死に走っていた俺の前方に黒い影が現れた。 「いいぃっ!?」 左足でブレーキをかけ、速度を急激に落とす。 後ろの足音も俺が止まると同時に停止した。 「……2匹いたのかよ……」 新たに前方に現れたシーサーと後方のシーサーはその場で唸り声を上げている。 四つの紅い目が俺を真っ直ぐ睨み付ける。 パッと見、2匹共同じ顔をしているように思えるけど、よく見ると前の奴は怒ってるような顔、後ろの奴は笑ってるような顔をしてる。 (……ってそんなのん気に解説してる場合じゃねぇだろ!! やべぇ、挟まれた!!) 2匹のシーサーは雄叫びを上げ、同時に俺に迫って来る。 シーサー達が地面を蹴る度に、俺の足元がグラつく。 その距離が5m、4m、3mと短くなっていき、そして、残り2mの地点で2匹は勢いよく飛び上がった。 宙に浮いたシーサー達の口が俺に迫る。 そんな危機的状況の中、俺の目にある物が飛び込んできた。 (しめた!!) 俺は転がるようにその場から離れ、ついさっき発見した物へ駆け寄る。 俺が見つけた物とは「坂本」と彫られた一つの表札。 続いてその表札を掲げた家に目を移す。 (間違いねぇ、「リョーマさん」の家だ) 背後から笑ってる方のシーサーが飛びかかってくる。 高く上に飛んでシーサーのタックルを回避し、そのまま坂本さん家の塀を飛び越える俺。 塀の中はバスケットコート1面分ほどの庭になっており、人工の芝生が敷かれていた。 俺が着地した位置から4、5m離れた場所にオレンジ色の外灯に照らされた玄関が見える。 シーサーの頭が激突し、塀に大きな亀裂が入る。 俺は玄関まで必死に走る。 説明が遅れたが、今俺が不法侵入してるこの家の主の名は「坂本 竜馬(さかもと たつま)」。 俺のクラスの現担任だ。 俺の唯一の得意科目「歴史」に登場する人物と名前が酷似している事から「リョーマさん」と呼んでる。
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