4人が本棚に入れています
本棚に追加
午前0時をすぎ、パーティーの雰囲気は騒がしいものからシックな大人びたものへと変わっていく。
セナはシャンパングラスを片手に外が見える窓際にいた。
外はしんしんと白い雪が降り始めており、丸い月が明かりとして照らしている。
少女はただそれを見つめていた。
アレンはそんなセナを視界にとらえ、かつかつと靴音をたてて側に近寄る。
「どうしたんですか?」
努めていつもどうりを装い声をかけると、少女は振り返り壁を背にもたれ掛かった。
「ちょっと、思いだしてたの。」
何を。と問いかけるまえに、セナは続けた。
「AKUMAに殺された、両親のこと…。今日、命日だから…。」
室長である青年から聞いたことがあった。
彼女は雪の深い地方出身で、父母と三人家族だったらしい。
しかし、地方であったがゆえに伯爵に目をつけられAKUMAの襲撃をうけた。
襲撃で生き残り、適合者として己の身を守れたセナは教団に拾われたのだ。
「雪を見ると、あの日を思いだす。真っ白な雪が血に染まって、命が奪われていった日…。苦しんで、砕けちっていった人々…。」
いつか自分もそうなってしまうのではないかと思うと、怖い。
そう伝えた少女は怯え、小刻みに震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!