4人が本棚に入れています
本棚に追加
「言わねーと、ここで襲うぜ。」
独特の声が発した言葉に目を丸くするも、さすがにそれはしないだろうと腹をくくり純はだんまりを決め込んだ。
なんといってもここは街中からそう離れていない路地。
怪しい行動をすれば多くの人目についてしまう。
「じょーだんでしょ。早く手どけて、家帰ろ。」
けろりとした様子で彼の手を掴む。
すると、逆にその手をつかみあげられた。
「じょーだんなんかじゃねぇよ?」
驚きが思考を支配するなかで、彼の顔が間近にせまり視界をおおう。
唇が感じた柔らかな感触から、穏やかな熱が伝わった。
「っ…。」
思わず息をつめるが、彼は止まらず口内を侵していく。
侵入した異物により唇は呆気なく力を失い、難なく蹂躙を許した。
時が流れたころ、ようやく彼が唇を離す。
息が乱れる自分とは裏腹に、ひどく満足そうな彼は微笑すらたたえてこちらを見ており、その平然とした顔を見るや否や頬が赤みを得た。
「し、信じられない…!!本気で…っ。」
「だから言っただろー、襲うって。」
ぺろりと己の唇を舐めながらにんまりと笑みを浮かべた銀色の相貌。
純は不覚にも美しいとすら感じてしまい、もはや何も言い返すことはできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!