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突如灯った蝋燭の灯りに驚き、うつむき加減だった顔をあげる。
辺りを見回すが、部屋には何ら変化は見られなかった。
不思議に思っていた矢先。
「誰を待ってんの?純。」
背後から声がかかり、同時に強く抱きしめられた。
かぎなれた煙草の香りが鼻腔を擽り、自然と口ずさむ。
「ティ、キ…。」
言ったと自分が理解したからか、再び涙がこぼれおちる。
久しぶりの彼の声。
彼が呼ぶ自分の名前。
愛しさが込み上げていた。
「何泣いてんだよ、俺が来ないとでも思ってた?」
彼の言葉にこくりと頷くと、やれやれとあきれぎみの様子が後ろからでも伝わってくる。
彼は約束がなかったにも関わらず来てくれた。
少しでも来てくれないと思ってしまった自分に嫌気がさす。
「ごめん、なさい…。私…っ!?。」
いいかけた言葉は飲み込まざるを得なかった。
彼がそっと自分から離れて前に立ち、あまりにも優しげな風貌を、向けていたからだ。
いたたまれなくなり視線をつい逸らしてしまうと、彼はそれを見越していたのかくすっと声をもらす。
「こっち向けよ。せっかくの聖夜だ、二人で過ごすもんだろ?。」
無造作ながらに手をひかれ、準備した料理がならぶテーブルにつく。
冷めてしまった品々に、さすがにティキは申し訳なさそうにしていた。
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