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「ああ…いーの。私はティキが来てくれただけでもう十分だから。」
彼にむけて伝えた言葉は、決して嘘ではない。
綺麗にした部屋も、料理も、所詮は愛しい人と楽しく過ごすための道具。
大切なのは、共に過ごすことなのだから。
「悪かったな、遅くなって…。でも、そう言ってくれると来た甲斐がある。」
罪悪感を感じていた表情だが仄かに口元がゆるんだティキに、純は少なくともほっと胸を撫で下ろした。
せっかく来てくれた彼に気をつかわせたくはない。
そして二人は料理に手をつけ、次第に話ははずみ、時間は確実に流れる。
用意してあった上物のワインを口にし、酒に弱い純はほんのりと頬を赤くしていた。
「純、そろそろだぜ。」
「んー?」
浮かれぎみなのかどうも軽い反応だ。
「もう、日付が変わる。」
ティキが口にしてから
三、二、一…。
ふりこ時計の鐘が、時を伝えた。
「メリークリスマス、純。」
ティキはそっと口にして席をたち、純の横に片膝をつく。
怪訝な顔をする純をよそに、彼は片手をポケットにつっこみ、もう片方の手で彼女の手を引き寄せた。
「ティキ…?」
呟きを気にせず、彼はポケットから取り出した小さなものを、引き寄せた左手
薬指にとおす。
柔らかな笑みを称えるティキとは対照的に、純は驚きと喜びがせめぎあい、反応ができないでいた。
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