2007.06.07

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  夜。春。人の気配のない山の中、所々に細い月光が反射する湖がある。   湖を囲む桜は風で舞い、水面は桜の花びらで覆われる。   水面には少しだけ隆起した影が映っている。人影である。   仰向けに浮く人影は、死んだように動かないままである。ただ、目は開いており、ずっと虚空を眺めている。   青ざめた唇が微かにうごく。四語か五語の単語を繰り返し呟いている。 …あ・い・う・い……
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