巻き起こる2つの疑心

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「気にしないよ。だって、そんなの関係ないもん」 俺の問いに、榊原はそうハッキリと答えてきた。 「私はもう美夏ちゃんを友達って認めてる。ならもう、美夏がロボットだろうとなんだろうと、私の知ってる美夏ちゃんだから」 「星歌……」 榊原の言葉を聞いた天枷は、笑みを浮かべた。 心底、嬉しそうだ。 何より、俺も嬉しいんだ。 やっぱ榊原は俺の思った通りのヤツだったな、と。 「最高だ、榊原」 だから俺は、笑顔でそう言った。 すると榊原は、 「そう思ってくれるならさー、そろそろ私の事を苗字以外で呼ぶようにしない?」 真剣な表情から一変、ニヤニヤした顔に変えて、そう告げてきた。 ……なんで今、それが出てくるんだ。 それを初めて言われたのは確か…… そう考えながら俺は、昔の記憶を探り始めた。 実は、俺と榊原が初めて顔を会わせた時……付属に入学した一週間後くらいだ。 女子バスケ部だった榊原が、俺に男子バスケ部の入部を勧誘してきた。 何故か榊原は、俺が小学生の時にミニバスケットボールクラブに所属しているのを知っていたからだ。 その時に、榊原は自分の名前を紹介しつつ「星歌でいーよー」と言ってきたのだが───俺は敢えて「榊原」と呼んだんだ。 それを聞いた榊原は不満な表情をしていて、それからしばらくは会う度に「星歌って呼びなさい!」と言ってくるようになった。 ……まぁ俺がいつまで立っても「榊原」を止めないから、榊原も言うの諦めちゃったんだけどな。 そんな記憶を想起し終えた俺は、「仕方ねぇな」と言いつつ榊原の名前を呼んだ。 「じゃあ───『星歌』。これで良いんだな」 「あ。……うっ、うん」 すると星歌は何故か、一瞬だけしどろもどろになった。
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