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ぼんやりと見える昔の我が家の前に、幼い頃の自分が帰ってくるのを目撃した。
あぁ、これは夢なのか。
それを見た瞬間に理解した。
ガチャッ
幼い自分が玄関の扉を開け、「ただいま」としょんぼりした声で話す。
しょんぼりしてた理由は……確か初音島の外の友達の家に行こうとして迷ったからだった気がする。
バタバタッ
廊下の向こうから駆け寄ってくる足音が、
母親だ。
幼い俺は、しょんぼりしている自分に母親が気付いて心配してくれるものとばかり思っていた。
───だが、母親は目を点にして言ってきた。
. . . .
『えっと、君はドコの子かな? お家、間違えてるわよ』
「っ!!」
その光景を最後に、青年は目を覚ました。
「全く……懐かしいもんを見たな」
青年は汗びっしょりのTシャツをパタパタ扇ぎながら呟いた。
「親父とお袋、元気かな……」
水平線から姿を出し始めた太陽を、窓から眺めながら、青年は再び呟いた。
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