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――真っ赤な彼女――
「ねぇ! 何してるの?」
「……」
弾んでいるような声が僕を苛々させる、今日はキャンパスまでやってきやがった。
「ねぇって……」
「キャンパスに何をしにくるんだ、アンタは」
俺はそれだけ言ってから彼女から離れいつもは使わない最前列の一番左側のデスクに腰掛けテキストを広げる。
「ねぇって……一緒に講義受けようよ?」
「近付くな、どっか行け、誰が僕に近寄っていいって言った」
僕の発言を無視して彼女は隣に腰掛けた、僕が文句を言う前に講義が始まる時間になったため大きな溜息をついてから遠くにある窓の景色に目を向けた。
「お、葉月、今日は変人と一緒なんだな」
「あ……牧山君」
「……話するならそいつの方行ってくんない? 邪魔」
勝手に話し合っている彼女達に迷惑だ、という顔をして後ろを指差し、睨みつける。すると彼女はノロノロと自らのテキスト類を片付けて後ろの席へと移動していった。
「……」
五月蝿い声が後ろから聞こえる、はっきり言って耳障りだ。
僕が大嫌いな弾んでいるような声が僕と話している時よりも弾んでいた、それ自体に何故か苛々が増していた。
「でさぁ……」
「うんうん、だよねー」
僕は大人しくノートを録っていた手を止めテキストを鞄の中に入れ、席を立って一番後ろの扉から出た。
「あ、まっ……」
耳障りな声が聞こえたが扉が閉まると同時に聞こえなくなる。
「まただ……また刈られてる」
学校から出て僕のお気に入りの場所に行った、切り立った場所にあるここは、一番青い空間に近い、そして雲は今日も刈られてる。
「……」
「待ってよ……置いていかないで」
「……」
「何で? あたしが何かした?」
「……」
「あたしは……あたしっ」
「黙れば、僕に近寄るなって何回言えばいいんだよ、アンタもよほどの変態だな」
僕が青い空間を見ながら言うと背中に小さな衝撃とほのかな暖かさが広がる。
「……なにがしたい、君は」
「一緒に居ちゃ駄目なの? 置いていかないで……貴方はいつも何処か遠くへ行ってしまいそうなの……」
彼女の涙声だけがこの空間に淋しく響いた
ドウセ枯レル君ナラ
一緒ニ枯レテシマオウカ
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