(起)

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「はい、みんな。おはようございます」  おしとやかで、如何にも大人の女の人って感じの挨拶と共に、担任の宮園 安奈(みやぞの あんな)先生が入ってきた。  宮園先生が教壇に着くと、突然改まった。 「えっと、今日からちょっとの間、先生は学校をお休みします」  その瞬間、しばらくの別れさえ惜しむ、みんなの「えー!?」が教室に木霊した。  僕達『超常現象探偵クラブ』が一番驚いた。だって顧問なのだから。  『馬鹿な事』と、どの先生も取り合ってくれず、途方に暮れていた時に、宮園先生が顧問を引き受けてくれたのだ。 「先生ね、もうすぐ赤ちゃんが生まれるの。だから、みんなに負けないくらい元気な赤ちゃんを産んで、また戻ってきます」  華奢(きゃしゃ)な体型から張り出す大きなお腹を、この世で一番大切な宝物のように優しく撫でる。宮園先生の何時に増して幸せそうな笑顔が、印象的だった。
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