(起)

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 すると、将太が、ノート型パソコンの向きを僕達の方に向けた。 「ほら、コレ見て」  液晶画面を覗き込む僕と優也。僕は、画面に書かれている文面を読み上げた。 「都立、……んとか病院……」 「都立、輝摂総合病院(こうせつそうごうびょういん)、産婦人科(さんふじんか)」  漢字が読めない僕に代わって将太が読み上げた。  続けて僕は文面を読み上げた。 「今月に入って、出産時に、妊婦、新生児ともに死亡が相次ぎ、その数十五例。病院側は、一次、妊婦の受け入れをストップし、原因解明に乗り出したが、直接的な原因が見当たらず、警察による調査も始まった。しかし、他殺の可能性もなく、母子共に、『自然的に』術中死したと見られる為、妊婦の受け入れを再開。今後、またしても術中死が起こるのだろうか?」  僕が読み上げると、将太が中指で薄いフレームの目がねを押し上げた。 「怪しくないか?」 「そういや、この間もテレビのニュースでやってたよな。『出生率0%、死亡率100%の産婦人科』って言われていたっけ」  将太が両腕を組んだ。 「じゃあ一度調べてみようよ。大した依頼も今のところ無いんだしさ。確かにこの件は怪しすぎるよ」  僕は、やるき気満々で提案した。  その時、教室の扉が勢い良く開いた。音を立て、開いた扉から妖艶な笑みを零す島崎が現れた。 「アンタ達。私の存在を忘れてないでしょうねぇ? 私も、部員よ」  デジタルカメラ片手に僕達を見下ろす島崎に、「あ……あぁ」と返事をした。 「校長先生が、クラブ活動は続けていいだってさ」 「ほんとか!?」 「私に感謝しなさいよ」  なんと、島崎が、顧問が不在で休部に成りかねない状況を打破してくれたのだ。 「ありがとう。島崎」  僕のお礼に島崎が、いきり立つ眼(まなこ)で答えた。 「だって、特ダネスクープでしょ。 病院に行くわよ」 「……聞いてたのかよ」  この事件が、僕達『超常現象探偵クラブ』の最初の事件になろうとは、願ってはいたが、思いはしなかった……。
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