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都立 輝摂総合病院の産婦人科にやってきた僕達は、さっそく聞き込みを開始した。と言っても、あからさまに医者などに聞く事はできないので、やんわりと看護士や入院患者に聞き込んだ。
とてつもなく広い病棟なので、四人に別れての聞き込みだ。
みんな宮園先生のように膨らんだお腹を、苦しそうに、でも幸せそうに抱えている。
看護士のお姉さんに話を聞いたところ、妊婦受け入れ以来、出産はまだ無いと言う事だった。
「ねぇ、お姉さん。このところ変な物を見たり、感じたりした事ない?」
「いいえ、無いわよ。気を使ってくれてありがとう」
三回の質問に三回の同じ答えが返ってきた。
結局、四人に別れて聞き込みをする程の人数もいなかった。
そりゃ、好んで『出生率0%』の病院を選ばないだろう。どちらかと言うとガラガラだった。
やっぱり、僕達の思い過ごしなのだろうか? それとも、これから起きるのか?
一度僕達は、『いつもの場所』で情報を照らし合わせる事にした。
『いつもの場所』とは、『モクドネルデ』と言うファーストフードショップの事だ。
僕と優也と将太は、フライドポテトを齧(かじ)りながら島崎を待っていた。
すると、自動ドアの開閉と共に、ポニーテールが暴れ牛の様に飛び出してきた。
「スクープよ。スクープ」
「何か分かったのか?」
僕は、手に持っていたコーラが入った紙コップをテーブルの上に置いた。
島崎は、少し興奮気味で僕達のテーブルに両手を着いた。
「772号室の『吉村 莉子(よしむら りこ)』さんて人が、二日前の深夜に、女の人の幽霊らしき物を見たんだって」
「マジか!?」と驚く僕と優也が体を乗り出した。
「まだ幽霊と決まったわけじゃないんじゃないか?」
「だったら俺達の目で確かめるのが一番だ」
冷静に考える将太に、僕はフライドポテトを付きつけた。
本当か嘘かなんて関係ない。「関係ない」と言えば嘘になるけど、これが、僕達『超常現象探偵クラブ』にとって最初の事件になれば良いなと思っただけだ。
それに疑って動かなければ何も始まらない。
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