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ある夏の夜のこと。
山下拓海(ヤマシタタクミ)は、
中学時代の仲間達4人と、
心霊スポットとして知られる千葉県の長柄(ナガラ)町にある廃墟ビルに来ている。
このビルは3階建てで、
県道13号線沿いに続く小道の先に建てられているのだ。
拓海達が来た目的は勿論肝試しである。
「何だかひんやりしてる気がするぜ」
ビルの前に立った佐藤雅人(サトウマサト)がそう言った。
近くで見ただけで既にその建物からは、
何か違う雰囲気が漂っていた。
まるで来る者を拒んでいるかの様に……。
「まさかビビってるんじゃないだろうな?」
からかう様な拓海の言葉に、
どっと笑いが起きる。
「そんなことないよ」
雅人はそう言い返す。
拓海達は明らかに悪ふざけしている。
ただ2人いる女子のうち1人の、
坂巻留美(サカマキルミ)を除いては……。
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