宅配ちゃん

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「たまに小さな箱なのに凄く重かったりすることがあってね。品名を見ると〈ネジ〉って書いてあるんだけど。絶対にピストルか弾だと思ったりしてね…あはは」 で、冒頭の話に戻るのだが、妙な客がいたのだという。 「普通のアパートなんだけど、部屋のなかが臭くてね」 ドアを開けただけで、プーンと妙なすえた臭いが鼻をつくのだという。 「住んでいるのはフリーターみたいな、おっちゃん。三十そこそこだと思う」 いつも ヘロヘロのトレーナーを着ていて、髪はふけが湧いているようだった。 「宅配ちゃんって呼んで、べちゃべちゃ世間話をしたがるのよ。こっちは時間で勝負してるっていうのに……。それにおかしいのは、それだけじゃなくて」 その男は自分から自分へ送っているのだという。 「送るのは同じ箱。ふたつあって。ひとつ持っていくと、もうひとつ出すの。宛先も届け先も、いまいる部屋なのよ。」
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