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俺が何も無い方向を指さす。
何も見えないと言う僕を見る俺の目は、やはりどこか悲しそうだ。
『よく見ろ、見える筈だ』
「見えないよ」
『お前は、見えないふりをしているだけだろう?』
俺が、何を言っているのかが、わからない。
俺は僕であるはずなのに、わからない。
そんな僕を真っすぐに見据えながら、俺は言う。
『あの扉を開けるのは、俺じゃない、お前だ』
「……」
『だって俺は、どこにもいない。 いるのは、お前だけだ』
俺が、右目から一滴の涙を流す。
僕の左頬は、微かに濡れていた。
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