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『許せない、もう……一緒にいたくない。 だから……さっさとあの扉を開けて、一人で行っちまいな』
驚いて、俯いていた顔を上げる。
俺は、笑っていた。
精一杯、僕に向かって笑っていたのだ。
僕は――泣いていた。
俺は僕、僕は俺の筈なのに、筈だったのに、俺は笑って、僕は泣いている。
一つが、二つになってしまった。
『俺はいいんだ、寂しくなんかない。 お前はいつも言っていただろう? 僕は君で、君は僕なんだよって、だから……お前が楽しけりゃ、俺はそれでいい』
俺が僕の手をとり、一歩一歩、ゆっくりと進む。
何も無い方向へ。
ナニモナイ方向へ。
「いやだ……嫌だ。 僕は、まだ君と一緒に――」
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