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月のない夜だった。
気がつくと、世界は闇色に染まっていた。先ほどまで歩いてきたはずの道はおろか、自分の足元すら見えない。いつの間にか少女は、黒い靄に包まれていた。
――あそぼうよ。
あどけない子どもの声が、少女を誘う。
――こっちだよ、こっち。
ここはどこ？ 少女は闇に向かって尋ねた。
――こっちにくればわかるよ。
その誘いは、幼い少女の好奇心をくすぐる。
「ねえ、どこにいるの？」
――ほら、ここだよ、ここ。
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