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「あたし、帰る!」
必死に少女は叫んだ。掴まれた手を引き抜こうとしたが、四歳の子どもにそれだけの力はない。
――今ごろ気づいても遅いんだよ。
闇の声が一変した。しわがれた低い声が、少女の体を強張らせる。
――それにしてもうまそうな人間だ……!
少女の背に寒気が走った。助けを呼ぼうにも声が出ない。魔物の罠なのだろうか、体が動かなくなってしまっている。
助けて。体が引きずられるのを感じながら、少女は痛切に願った。
だれか、助けて――。
おそろしいほどに、辺りが静まりかえる。もうだめ、と少女が目をつぶったときだった。
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