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「目をあけろ! ちゃんと見るんだ!」
凛とした男の声が、静寂をやぶった。それと同時に、掴まれていた手首が解放される。少女の体は、大きな腕に軽々と抱き上げられた。
「よく見るんだ。きみになら見えるはずだよ」
少女を助けてくれたらしい男は言う。
「きみがこの幻を解かなくちゃ。ほら、魔物はきみの前にいる」
見る、という意味が分からないまま、少女は彼の言うとおり闇を凝視した。恐怖とたたかいつつ、まばたきをしないように目をみはる。
闇が、ひらけた。
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