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ふと、夜中に目が覚めると、横にアスカが居なかった。
ここ数日、彼女と一緒に寝ていたのだが、こんな事は初めてだ。
心配になり部屋を出ると、呼ばれている気がして、屋上に導かれる様に足を運ぶ。
すると、銀色の髪に月の色の瞳をしたアスカそっくりな少女が、長い髪をなびかせ、月を見上げていた。
少女は、俺に気が付いたらしく、こちらに振り向き声を掛けてきた。
「グレンか…我と話すのは初めてだな。」
「アスカ?じゃないみたいだな…。」
疑心に満ちた表情を向ける。
「我は、アスカの半身だ…。アスカであってアスカでは無い。」
「じゃあ、あんたの名前は?」
「マヤだ。普段はアスカの中で眠っているのだが、この世界に飛ばされた時に、表に出られる様になったのだ。アスカの意識が無い時、限定だがな…。」
「この世界に飛ばされた?」
「我とアスカは、こことは異なる世界の者だよ?」
サラリとマヤは答える。
「何故、飛ばされたんだ?」
「アスカは、巫女…こちらの世界で言う神官をしていたのだが、聖域で祈りを捧げている時に、光に包まれ、あそこに飛ばされたのだ…。主が、アスカを助けた時、我は表に出られる事に気が付かず見ていた。」
マヤは、溜め息を吐きつつ答えた。
「他に、聞きたい事はあるか?我が表に出る時、力を消耗するらしくてな…長い時間出られないゆえ、手短に頼むぞ?」
「アスカは何故、殆ど話さない?」
「巫女は、最低限しか人と話す事が出来ない環境だったゆえ、不慣れなだけだ…。神に仕え聖域を護る為、厳しく辛い役目…。アスカは、大人しい娘なのも理由だがな。」
マヤは、厳しい表情を顔に張りつけていた。
「そうか…。そうなると、この世界に一人きりって事だよな?それに、頼る知り合いも家族も居ないのか…。」
「主はどうしたいのだ?半端な同情はアスカを傷つけるぞ?」
俺は、その台詞に迷う。
「迷うなら放り出せ…アスカならこの世界でも生きられる。巫女としての力もあるしの…。それに、アスカが寝ている時は、我が護れる。」
「駄目だ…こんな小さな少女を放り出す事なんて出来ない。」
その台詞に、マヤは頬を膨らませ拗ねた表情になる。
「こう見えても16歳だ…。子供では無いぞ……。」
「すまん…。」
「再度、聞くがどうする?」
俺は考え、答えを出す。
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