第一章

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凛「ズルい!竹刀無しでもいけるもん」 凛は拳を握り、構えをとりながら凪に言う。 『蔵の整理』とは、先月亡くなった祖父の荷物を親戚に形見分けする際、蔵にある荷物も整理して仕舞おうと双子の母凛華(リンカ)が双子に整理を頼んだ……のだが、凛は蔵に良い思い出がなく嫌がった為、試合をして凛が勝ったら凪一人で行くという勝負を提案し、見事凪が勝利したのだ……。 凪「り~ん?」 凛「はうΣ!」 凪「…………行くよね?」 凪は凛の嫌がることはしない主義だが、こんなやり取りは双子にとって楽しい一時に過ぎない。 凛も長い付き合いから引き際を心得ており、何だかんだ言っても凪の機嫌を損ねる行動はしない。 凛「…………はぃ(;_;)」 凛は諦めて返事をし、凪の様子を上目遣いで確認する。 凪は可愛い妹の仕草を見て緩みそうになる頬を引き締めた。 凪「コホンッ…着替えておいで。俺も着替えたら蔵の前に行くから」 凛「分かった」 凛は踵を返すと道場を出ていった。 その背を凪は柔らかく微笑みながら見送り、我に返ると自分も着替えるために道場を後にした。
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