吹き荒ぶ地

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   天候は晴れ。  どこまでもどこまでも、赤褐と白灰のマダラ模様。そんな変わり映えのない景色が広がる。  そこはとても乾いていて、舞う砂埃が吹き荒ぶ風に乗り、何処へと飛んでいった。    ハンターズギルドが管理している狩場の中でも、特に高低差の激しい『峡谷』である。  その起源は幾万年前。元は高原だった一帯の地の底が身震いし、深い谷へと変貌したのだという。  形作られた急激な高低差は水流を速め、激流は更に地を削る。    そうして年月を重ねてゆくうち、かつて緑で溢れていた高原は、赤褐色の大地へと変化していったのだ。    その峡谷へ、一人のハンターが訪れた。  青色を基調とした防具『アネシスシリーズ』を纏う彼女は、名をリリィ・シャンプレインという。    アネシスシリーズの原点は、異国の典礼用衣装だった。  とある詩人が伝えた賛歌と、それに感銘を受けた職人が激しい狩りにも耐えうるようアレンジしたものだ。  要所には良質な鉱石から精製した鋼が施されており、大部分にモンスター由来の頑丈な軟質素材を染色した、剛よりは柔の防具だ。    蒼穹のように透き通った青色と、元に忠実な、精美で鋭いシンボルが刻まれた一見すると服のような淑やかなデザイン、異国の言葉で『安寧』を意味する防具を彼女は気に入っていた。  
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